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パスタの定量盛りつけアルゴリズム開発で、働き手不足に立ち向かう

森昭斗(シニアエンジニア/株式会社DeepX)×前田修一(ハードウェアエンジニア/株式会社イシダ)

DeepXは2017年から、株式会社イシダ(以下、イシダ)とともに、「パスタを定量で盛りつけるロボット」の開発を進めています。

イシダは、世界初の発明「組み合わせ計量」システムが食品生産ラインで国内80%のシェアを持つ機械メーカーで、主に、食品の計量・包装を行う業務用機器の製造販売を手がけています。コンビニ弁当や惣菜、パッケージされた野菜、袋詰めのポテトチップスなど、私たちが日常的に手に取っているさまざまな食品は、イシダの機械によって計量されています。

イシダはこれまで、食品製造に関わる作業の自動化を目指して開発を進めてきました。しかし、柔らかく形状が定まらない食品の計量・盛りつけ作業は、既存の技術では自動化が難しく、いまだほとんどが人の手で行われています。食品製造業界の働き手不足が進行し、今後より一層の深刻化が予想されるなかで業界が成長していくためには、生産性の向上が急務となっています。

そこで、イシダのハードウェア技術とDeepXのAI技術を組み合わせ、「パスタ盛りつけロボット」開発プロジェクトが始まりました。いったいどのようなアプローチで行われているのでしょうか。プロジェクトの現場で感じるやりがいとは。

本記事では、イシダのハードウェアエンジニア・前田修一氏と、DeepXのAIエンジニア・森 昭斗が開発現場についてお話しします。

非定型の食品をつかむには、従来の自動計量技術では限界があった

森(DeepX):DeepXとの協業が始まる前、イシダさんは自社でパスタの計量マシンの開発を進めていたんですよね。

DeepX 森 昭斗

DeepX 森 昭斗

前田(イシダ):はい。イシダでは、20年以上前からこの状況を予測し、数年前からは自社で自動化に挑んでいました。でも、イシダの技術だけでできることに限界を感じていましたね。従来の自動ピックアップロボットは、決まったルールのなかでしか動かせないもので、たとえば、「決まった位置にアームを移動して、ものをつかむ」というような同じ動作の繰り返ししかできませんでした。

しかし、たとえ機械がルールどおり動いても、非定型の物体は都度かたちが変わってしまうんです。特にコンビニなどで需要のあるパスタは、「粘性がある」「柔らかい」「麺が長く絡まりやすい」「メニューにより茹で方が違う」などのさまざまな要因から、定量にピックアップすることがすごく難しい。ハードウェアを改善するだけでは実現できないかもしれないと考えていました。

イシダ 前田修一氏

イシダ 前田修一氏

森(DeepX):逆にいうと、パスタの定量ピックアップが成功すれば、非定型の食品はほとんどクリアしたことになる。とても難しいことにチャレンジされていたんですね。

計量と誤差の修正を繰り返し、AIアルゴリズムの完成を目指す

森(DeepX):いまDeepXが開発を進め、イシダさんに提供しているAIは2種類あります。パスタの盛り具合を三次元画像認識によって確認し、指定の量をつかむためにはどこにアームを入れれば良いか判断するAI。もうひとつは、パスタの山にアームを入れたあと、アームがパスタから受ける力をもとに、ピックアップするときのつかみ具合を調整するAIです。

そのふたつでロボットを動かし、容器にパスタを盛りつけて計量し、誤差があればやり直す、いまはこれを繰り返して、AIアルゴリズムの完成を目指しているところです。

実験のために毎日繰り返し大鍋でパスタを茹でる

前田(イシダ):AI技術を取り入れることに決まったときは、すごく魅力的な話だと思いました。ただ同時に、何をすれば良いかわからないという戸惑いもありましたね。

森(DeepX):イシダさんが得意とする機械はハードウェア単体で動くもので、はじめに見せていただいたロボットは、計算機で制御できるものではなかったんですよね。AIで動かすために、まずは計算機から制御できるハードの開発をお願いしました。

現場への導入を見越して、開発を進めていく

前田(イシダ):私はふだんメカ設計を担当しているので、いままでの経験をもとにハンドを動作させるアクチュエータ(装置)を設計し、森さんに見せてアドバイスをもらったりしました。

森さんは、一方的に要望を伝えてくるわけではなく、できる限りこちらのビジョンに歩み寄ってくれました。当社は、さまざまな現場に投入できるよう、シンプルで汎用性のあるものをつくりたかった。なので、あまり複雑な仕組みにはしたくなかったんですね。

森(DeepX):あくまで現場への導入を見据えたプロジェクトであるため、そこは考慮しながら開発する必要があると思っていました。たとえば最終的に製品化した際、ある程度コストを抑えられる仕組みも必要です。

DeepXでは、お客さまの考え方を理解して、現実的な落としどころを見つけながらゴールに向かっていくことを心がけています。そのために、AI導入で実現できることや、そもそもAIとはなんなのかといったお話を前田さんにもさせていただきました。

現場からも期待を集める自動化技術

前田(イシダ):それから、1か月くらいかけて計算機からハードを制御できるよう改修しました。パスタを使った実験に入っていったのは、そこからですよね。

森(DeepX):工場へ足を運んで、従業員の方がピックアップする動きを撮影したり、実際に自分の手でパスタを取ってみたり。そこで考えたピックアップの条件を満たすため、前田さんに相談してハードを改修してもらったり……。かなり早いサイクルでPDCAをまわしていましたね。

実際の工場を想定して実験を行う

前田(イシダ):プロジェクト開始から1年くらいで、なんとか実際の工場でテストするところまで開発を進めることができました。

森(DeepX):社内での実験で比較的良い結果が得られていたので、自信を持ってテストに臨みました。しかし、実際の工場で茹でられたパスタは、ふだんぼくらが実験で使っていたものとは状態がまるで違っていて、社内の実験で出ている結果が、現場ではぜんぜん出なかったんです。その日の夜にソフトとハード両方の改修を行いましたね。前田さんも改修部品を入手するため、始発で現場から東京まで往復してくれて。

前田(イシダ):正直、頭が真っ白になりましたね(笑)。でも結果的には、2日でリカバリーすることができました。その後、4日間かけてテストをしたのですが、その間工場で働く方たちから応援の声をいただくこともあって、自動化に対する現場からの期待を感じました。

現場に足を運ぶことが、新たな発見につながる

森(DeepX):現場では、ふだん自分がお店で買うような食品をすぐそこでつくっています。しかも、それがどうつくられているのか見ながら、実験もできる。さらに、製品ができるまでのプロセスを知ることで、いま開発しているものが製造ラインに導入されたときのイメージがしやすくなる。現場に足を運ぶことで、多くの発見が得られました。

前田(イシダ):パスタをつかむ人の動きがどうなっているか、どんな動きにポイントがあるのか、現場で議論したこともありました。現場に行くことで、いま開発しているものに対してより現実味が湧きますよね。

森(DeepX):ただ正確に食品の重さが計れるロボットをつくれば良いというわけではないんですよね。菌が繁殖しないように洗いやすい設計にするとか、ハードの面でも気をつけるべき点がたくさんある。

また、実際に現場を訪れることで、本当に人手が不足していることを痛感しました。自分が取り組んでいることの社会的な意義をすごく感じます。

AIを社会実装するために、何が必要か考えぬく

前田(イシダ):まだ、いまはひとつの山を越えた状態。次は実際の運用に向けて、どうすればエラーを防げるか、方法や対策を考えていく段階になると思います。通常のハードで起こりうるエラーは当社のノウハウでなんとかなるのですが、AIが絡んでいるものは未知数。森さんにいろいろ相談しながら、リスクを防いでいきたいと思います。

森(DeepX):「現場に実装する」ことは、決して簡単ではありません。AIを社会実装するためには、ただAIをつくるだけではなくて、それを社会と接続するまでのステップを考えたり、そのために必要な知識を集めたりすることが必要です。

前田(イシダ):しかしこの1年間、データを集め、実験を繰り返し、成果が出始めたことで、DeepXさんのすごさを感じています。

たとえば、アームの動き。多関節のアームは、関節が多い分くねくねとした動きが可能です。しかし前述したように、イシダが目指しているのはシンプルなもの。関節の数は少なくしたかった。そのため、滑らかな動きは難しいと思っていました。

でも実際にAIを導入したら、すごく滑らかな動きをするんですね。人の動きをもとにしているから、関節が少なくても、まるで多関節のロボットのような動きをする。DeepXさんは、ちょっとした動きでもアプローチの方法をとことん考えぬいてくれるから実現できたのだと思います。共同開発をしている意義を実感しました。

森(DeepX):ディープラーニング技術は、何を学習させるかが重要です。机上ではいくらでも可能性を考えられますが、「必要なデータは何か」「どうやってそのデータを取得して、どういったアルゴリズムを適用するのが最も合理的か」を選択していくことが重要です。そのためには、「本当の課題はなにか」をつねに考え、見極める。そうすることで効率的に開発を進め、ひいてはプロジェクトの実現に近づいていくんです。

AIの社会実装は簡単に達成できる目標ではないと思いますが、前田さんをはじめとして、イシダさんや当社メンバーの知恵・ノウハウを結集し、一丸となって、ひとつずつ着実に課題をクリアしていければと思います。

プロフィール

森 昭斗
株式会社DeepX シニアエンジニア
東京大学大学院修士課程を卒業後、大手SIerに入社。新規事業開発部門にて、データ分析アナリストや、AI技術を活用したシステム構築のプロジェクトマネージャーとして約6年間従事。機械の自動制御という、世の中にない新しいことに挑戦したいという思いから、DeepXのビジョンに共感し、2018年DeepXに入社。事業開発・プロジェクト推進・プログラム実装などの経験を生かし、DeepXでは幅広い業務に従事している。

前田 修一
株式会社イシダ 機械系エンジニア
理工学部系大学大学院修士課程を卒業後、株式会社イシダに入社。開発技術部門に配属し、食品製造業界向けの計量器やラベラーなどの新製品開発にメカ設計者として約10年間従事。人手不足という世の中の流れに対して、食品製造に関わる作業の自動化を推進するため、2017年に新しく立ち上げられた部門に異動し、主に把持関係の要素開発業務に従事している。

株式会社イシダ

https://www.ishida.co.jp/

業務用の計量・包装機の製造販売を中心に、産地から食品製造・加工、物流、小売までを網羅し、安全・安心な「世の中の食」を支える機械メーカー。現在、世界100 か国以上で事業を展開している。

Project Member

土木建設×AI

油圧ショベルの無人自動操縦で、オペレーター不足の解決に挑む

建設現場でのさまざまな土木作業の自動化に向け、ゼネコンのフジタ様と連携し、汎用重機である油圧ショベルの操作の自動化を目指す。
最先端のディープラーニングによる画像認識技術や強化学習技術を駆使し油圧ショベルによる掘削作業の自動化を実現した。

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